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【感想】漫画「信長協奏曲」

信長協奏曲 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス) 信長協奏曲 5 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

最近だだハマりしてるわけですが。
2011年8月現在、5巻まで刊行されています。

簡単にいうと、歴史が苦手な高校生サブローが戦国時代にタイムスリップしてしまい、顔がそっくりな織田信長と入れ換わる話です。
サブローは「信長は天下を取った人物」と誤解しており、「歴史を変えちゃまずいよな」と考え、信長として天下統一の道のりを突き進んでいきます。
※サブローが入れ換わっていることは信長本人とそのお伴しか知りません。

サブローはゆる軽い性格ながら、決断力は優れており、突飛な発想で周囲を混乱・困惑させながらも、功績を上げていきます。しだいに「ちょっと変わってるけど気さくでいいお殿様」として受け入れられ、忠誠篤い臣下を得、領民にも親しまれます。

タイトルの「協奏曲」に関しては、3巻ラストで驚愕の登場人物とともに明らかになります。
#この設定すげーびっくりした…。

  • サブローの飄々とした感じがいい
  • 無表情になることが多く、どう感じているのか分かりづらいところもいい
  • だから稀に見せる哀愁がたまらない
  • 2巻ラストの桶狭間の戦いに向けて出陣するシーンがカッコ良過ぎる
  • 前田利家はじめ臣下のサブロー好きっぷりが可愛い
  • 信長本人がサブローのことを愛おしそうな目で見るので、兄弟のようにも見えてなんだか和む
  • 竹中半兵衛の頼りになりそうなオーラが半端ない
  • 秀吉の腹黒さと顔を見てると織田軍から追い出したくなる
  • サブローと帰蝶が仲良し夫婦でなによりである。末長くばくはつしろ
  • 6巻はまだですか…(2012年初頭発売予定)

ストーリー展開に意外性はありますが、とんとん拍子で調子よく進んでいくのが苦手な方にはおすすめしづらいかも。

絵柄も好き嫌いが分かれるところだと思いますが、絵柄で食わず嫌いするのはもったいない、と…なぜなら私も初めはそれでスルーしていたので…読んでみると話が面白いし、話数を重ねた2巻あたりからサブローもカッコ良い顔を見せるようになります。

興味をお持ちでしたら、とりあえず2巻の桶狭間の戦いまで読んでみてはどうでしょうか、って感じでしょうか。

関連リンク

【感想】漫画「ヘタッピマンガ研究所R」

ヘタッピマンガ研究所R (ジャンプコミックス)

読んでみました。面白かったです。
# Amazonでは在庫切れになってるようですが、近所の本屋にはふつうにありました。

パースなどの作画面は、よくある講座本みたいになるのは仕方ないというか、そういうものだと思います。ただ、「こうやってました」「こう描いてます」という作者さん(描き手の村田先生だけでなくゲストの方も)の話がけっこう出てくるので、そういうところが楽しめました。
個人的には松井先生の「構図にこだわるのなんて キャラに心血を注ぎきってからでイイのですよ…………!」が印象的でした。(※松井先生の作品は構図にもこだわっていると村田先生の補足がついております)

あと、村田先生の「若い子がべらぼうに上手い、10代でそんな(上手い)絵描いちゃダメー!」(意訳)という話には共感せずにはいられなかったw
いやほんと、絵が上手いだけじゃなくて話が上手い人も多いですよね…ネットによって、表現する場がどーんと増えたからでしょうか。見る側としても数が増えたので良作とめぐり合う機会も増えたというか。

話作りは冨樫先生のところなど面白かったです。こういう話は参考にするというよりも、この作者さんはこんなこだわりを持って作品を作ってるんだなあという興味を満足させてくれる部分が大きいですね。

本の締めとして村田先生が 人それぞれ・自分なり を強調するのも頷けます。
経験談や練習談はあくまでその人にはそれが向いていたという話なので、自分にもあてはまるわけではないですし、ね。

漫画を描くうえでの参考になるだけではなく、読み物として楽しめる本だと思いました。

【感想】小説「時砂の王」


時砂の王(小川一水)

西暦248年、不気味な物の怪に襲われた邪馬台国の女王・卑弥呼を救った“救いの王”は、彼女の想像を絶する物語を語る。2300年後の未来において、謎の増殖型戦闘機械群により、地球は壊滅、さらに人類の完全滅亡を狙う機械群を追って、彼ら人型人工知性体たちは絶望的な時間遡行戦を開始した。そして3世紀の邪馬台国こそが、全人類史の存亡を懸けた最終防衛線であると――。

人類の存亡を懸けた時間戦争SFです。が、1冊で完結しているというお手軽さだったので、手にしてみました。

以下、ラストのネタバレまで含んだ感想です。カッティ大好き!な感じになってます…。

人類側の登場人物はたいてい好きでした。啖呵を切る彌与のカッコよさも、苦悩するオーヴィルの切なさも、カッティの冷たさも。特にカッティはオーヴィルからは疎まれていたようですが、私は大好きでした。冴え冴えとした透明感のある美女を想像していました。カッティ=サークという名前もいかにもシャープで似合っていると思います。

カッティがひとつの時間枝に見切りをつけるたびにオーヴィルたちは不満(悔しさからくるものが一番大きいのだとは思うけど)を募らせていっていましたが、私は彼女が諦めると「この時代ではこれ以上メッセンジャーたちは死なないんだな」とほっとしていた気がします。

それにカッティのラストには痺れました。自爆でアフリカ戦線の敵の8割を殲滅とかカッコ良すぎる。彌与の「それで戦っていたつもりか?」というセリフが効果的だったと思います。カッティは最後の最後で前線に立ったんだな、と(そもそも戦略知性体である彼女に物理的な武器を持てというのも無理な話ですが)。

また、この自爆は敵の殲滅以外にも大きな効果をもたらしました。反物質を用いた爆発は、21世紀から時間軍が救援に来るきっかけ、すなわち過去に時間戦争があったという裏づけになるのです。こちらはカッティの「死にすら意味があると言われるのは。」とリンクしているようで、これまたじわじわと興奮しました。

途中で戦線離脱したアレクサンドルの童話も、未来まで伝わっていたようで良かったなあと思いました。

オーヴィルは最初から最後まで切なかったです。彼を癒そうとする彌与を必死に応援してました。しかし、ラストで「サヤカ」とくるとは、お前、そこまで!と。とどめのようなものを刺された気分でした。オメガが空白があると気づくのもまた辛かったです。ただ、オーヴィルが最期に見て名を呼んだのは確かに彌与で、またオメガが心惹かれた相手が沙夜であることから、彌与はオーヴィルの空白を埋めるに足る女性だったのだと思います。

彌与は本当にカッコ良かったです。頭も良く、度胸もあって。ラストの叱咤激励にはぐっときました。それでいて幹に抱きしめられて安堵したりするのを見ていると、やっぱり一人の少女なんだなと感じて、戦の過酷さに苦しさも覚えました。

最後は3世紀のETを殲滅できたということで、戦争としては勝ちであり、この時間枝としてはハッピーエンドなんでしょうが、すかっとはしませんでした。読後感が悪いというほどではないですが、やっぱり切なさが残るなあと。ただ、オーヴィルの長く辛い戦いは終わり、彌与も穏やかな人生を歩み始めるようで、これで良かったんだろうなあとも思います。

【感想】小説「カナスピカ」


カナスピカ(秋田禎信)

先日、講談社「カナスピカ(秋田禎信)」を買いました。秋田禎信の「魔術士オーフェン」シリーズが凄く好きだったので、惹かれて買ってみたしだいです。
オーフェンでは独特の文体、絶望色したストーリー、でも全部が絶望じゃない、そんなところにハマったわけですが、カナスピカは表紙からして爽やか(青空の下に少女が立っている)。付いてる帯を見るにも爽やかさの予感。

今日、読み終わりました。爽やかでした(笑)。
物語としては結構ベタかも、でも読後の清々しさが心地よいです。少女と人工衛星の物語です――SFに分類されるのかもしれませんが、「サイエンス フィクション」というよりは、帯の言葉を借りて「すこし ふしぎ」。

講談社BOOK倶楽部:カナスピカでカナスピカが登場するところまで試し読みができます。PDFだから重いけど。

以下、ネタバレを含む感想です(個人的に「これは本文を読んで欲しい」というセリフは省いてあります)。

意表をつく、というのか、はっとさせることが上手いのは相変わらずだなあと思いました。個人的にヒットしたのが、麻雀と株の話と楽器の話。楽器では素で笑ってしまいました。あ、あと反物質も。

人工衛星であるカナスピカのキャラが良いです。機械らしく「論理的」、「演算」といった言葉を使い、数値についても正確さを求めるわけですが、それでいて「生物的直感」にも興味を示すので、むしろリアルに、高度な機械なんだと感じさせられます。
そんな彼は中学生である主人公を指して「原始的」と表現します。大人と比べて、説明があまり上手くなく、効率的でないところを見て。主人公は「じゃあ、大人に手伝ってもらえばいいじゃないか」と言い返すのですが、それに対するカナスピカの答えがまた絶妙。ここぞとばかりに機械らしくない発言。こいつってば狙ってるのかというくらい、ワシヅカミの回答だったと思います。主人公は自分で水を差していたけれど。

もうひとつ良いなあと思ったのは、そんな大したことではないのかもしれないのですが、坂の上にある学校の謎の答えです。物語はナスピカの言葉で始まるのですが、加奈の視点では「学校が何で坂の上にあるのか」から始まるんですよね。だから印象に残っているのかもしれません。
学校が高いところにある理由は思い当たっていたのですが、その決め手がいいなあと思いました。ありきたりな理由かもしれないけれど、妙に温かく思えて(教えてくれたのがじいさんだったせいもあるのかも)、大人は子どもを見守っていたんだなあと改めてほっとした気分でした。
最近はなんというか、「本当に日本は終わるのかもしれない」と思える事件が多いだけに、正直泣きそうになった答えでした(だがこの答えも過去の話だということはおいておく)。

そして3万年後、カナスピカの記録を読んだ宇宙人がどう思うのか、なんとなく楽しみです。