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【感想】小説「カナスピカ」


カナスピカ(秋田禎信)

先日、講談社「カナスピカ(秋田禎信)」を買いました。秋田禎信の「魔術士オーフェン」シリーズが凄く好きだったので、惹かれて買ってみたしだいです。
オーフェンでは独特の文体、絶望色したストーリー、でも全部が絶望じゃない、そんなところにハマったわけですが、カナスピカは表紙からして爽やか(青空の下に少女が立っている)。付いてる帯を見るにも爽やかさの予感。

今日、読み終わりました。爽やかでした(笑)。
物語としては結構ベタかも、でも読後の清々しさが心地よいです。少女と人工衛星の物語です――SFに分類されるのかもしれませんが、「サイエンス フィクション」というよりは、帯の言葉を借りて「すこし ふしぎ」。

講談社BOOK倶楽部:カナスピカでカナスピカが登場するところまで試し読みができます。PDFだから重いけど。

以下、ネタバレを含む感想です(個人的に「これは本文を読んで欲しい」というセリフは省いてあります)。

意表をつく、というのか、はっとさせることが上手いのは相変わらずだなあと思いました。個人的にヒットしたのが、麻雀と株の話と楽器の話。楽器では素で笑ってしまいました。あ、あと反物質も。

人工衛星であるカナスピカのキャラが良いです。機械らしく「論理的」、「演算」といった言葉を使い、数値についても正確さを求めるわけですが、それでいて「生物的直感」にも興味を示すので、むしろリアルに、高度な機械なんだと感じさせられます。
そんな彼は中学生である主人公を指して「原始的」と表現します。大人と比べて、説明があまり上手くなく、効率的でないところを見て。主人公は「じゃあ、大人に手伝ってもらえばいいじゃないか」と言い返すのですが、それに対するカナスピカの答えがまた絶妙。ここぞとばかりに機械らしくない発言。こいつってば狙ってるのかというくらい、ワシヅカミの回答だったと思います。主人公は自分で水を差していたけれど。

もうひとつ良いなあと思ったのは、そんな大したことではないのかもしれないのですが、坂の上にある学校の謎の答えです。物語はナスピカの言葉で始まるのですが、加奈の視点では「学校が何で坂の上にあるのか」から始まるんですよね。だから印象に残っているのかもしれません。
学校が高いところにある理由は思い当たっていたのですが、その決め手がいいなあと思いました。ありきたりな理由かもしれないけれど、妙に温かく思えて(教えてくれたのがじいさんだったせいもあるのかも)、大人は子どもを見守っていたんだなあと改めてほっとした気分でした。
最近はなんというか、「本当に日本は終わるのかもしれない」と思える事件が多いだけに、正直泣きそうになった答えでした(だがこの答えも過去の話だということはおいておく)。

そして3万年後、カナスピカの記録を読んだ宇宙人がどう思うのか、なんとなく楽しみです。