【感想】小説「魔術士オーフェンはぐれ旅 約束の地で」

魔術士オーフェンはぐれ旅 約束の地で

構想として、キエサルヒマ大陸西部編が第1部、東部編が第2部、新大陸開拓黎明期が第3部で、この新シリーズは第4部にあたるそうです。第4部を読んでしまうと、がぜん第3部も読みたくなります。第3部の流れはあとがきなどで明かされているのですが、神人種族との戦いがどのように描写されるのかが特に気になります。

以下の感想にはネタバレを含みます。

秋田BOXで既読ですが、今回は挿し絵付き。表紙の中年オーフェンは哀愁があっていいですね。口絵が爽やかなオシドリ夫婦(そう見える)で思わずニヤついてしまいました。後ろの方でデバガメしてる娘たちが可愛い。

オーフェンは20年の歳月を経て、(まさかの地位にも就いているというし、)すっかり落ち着いたのかと思えば、いきなり「魔王オーフェン・フィンランディは今日も、恐怖の魔力によって世界を征服する邪悪な計画を示す書類に目を通していた。」で笑ってしまいました。笑うというよりはほくそ笑むというか、まあ、にやにやしてしまうわけです。
この巻では、そんなニヤついてしまう箇所が多くてたまりませんでした。マヨールの母親似の顔とか、カーロッタ村の薪とか、胡椒引きとか、馬とか。
もちろんコメディとしてだけでなく、「あ、こういうところは昔と変わってないんだな」と感じられて、そういう意味でもニヤりとしました。

嫁のほうは優しい母親になったようで、だいぶ落ち着いた印象です。勢力的には嫁>夫のようですが。夫婦仲は睦まじいようで嬉しいです。
三姉妹ではエッジが好きです。気は強いけど、両親のことが大好きな可愛い子だと思います。父親のことはもちろん、そのボディガードなんて渾名された母親のことも尊敬してそうな感じを受けました(ところで、この「魔王のボディガード」っていうのがすごく好きです。クリーオウは昔と変わらず、死地にまでくっついて行ってサポートしてたのかと)。
そういえば、エッジとマヨールは仲良くなったなと思っていたけど、よく考えたら馬車の中で失望されたところからは回復したんでしょうか…。この二人は今後も気になるところです。

戦闘シーンではマジクが際立っていた印象です。訓練所でのマヨールから見た戦いぶりは燃えました。そんなに成長したのか、と。いや、もともと魔術に関しては才能を見せていた彼ですが、頼りない面もあったので。それが騎士団で一、二を争うとか、しかも争ってる相手があいつだとか。なにより、オーフェンに信頼されているというのがいいですね。なんだか感慨深いです。
しかし、ラッツベインや生徒にはちょっとなめられているような? 騎士団以外にはあまりその実力を知られていないのでしょうか。ひょっとして、魔術戦士の脅威に反発する勢力への対策として、マジクの強さってあまりおおっぴらにされてないのかなとも思いました。かと言って、強い戦士がいないのも問題があるから、隊長なんかがしっかり護衛などの仕事もやってるのかな、と。まあ、単純にマジクの性格がそういうものだからってだけかもしれませんが…。

シリアスな戦闘シーンではないんですが、ラッツベインがエッジをおしおきするシーンの描写が好きです。あっさりと、しかしはっきりと二人の力量差が見えて。
このシリーズの、戦士の力量を感じさせるシーンがすごく好きです。こんなに強いキャラがいるのかと圧倒されて、燃えるし、心躍ります。

クレイリーはいけ好かない奴ではあるんですが、訓練所で見せた技能や覚悟を見ると、彼もまた苦難の時をオーフェン達と一緒に歩んだ戦士なんだと思い出されて、前半部分のマイナス点がだいぶ軽減されました。収拾のつかなくなった会議を終わらせてくれますしね。

開拓黎明期の話は重いです。読んでいるだけでつらい。冗談だったはずの忠実な軍隊を手に入れることについて考えてしまうくだりも、それだけ苦労しているのかと思うと、切ない気持になります。
クリーオウやマジクがいてくれて良かったと思うし、今の彼が家庭に恵まれていることに気持ちが救われます。
そして、馬にかじられてたり、嫁に叱られてたり、娘に甘えられてるオーフェンを見ると安堵します。これからもそうあってほしい。
なんてことを思った後に、プルートーの密約が明かされたりして、ちょっと絶望的な気分になったりもしました。そっとしといてやってくださいなんて、そんな次元じゃないことも分かりますが。
すべてが上手くいって犠牲がない、ということのない作品だけに、今後の展開が不安です。しかし、早く読みたいのもまた事実。次巻が楽しみでしかたないです。