【感想】小説「魔術士オーフェンはぐれ旅 原大陸開戦」

魔術士オーフェンはぐれ旅 原大陸開戦【特製小冊子付き初回限定版】

オーフェンの人生ハードモードというか、そもそもクリアの概念がないような…。

以下の感想にはネタバレ、考察を含みます。

序盤から大規模魔術が使用される戦闘で驚きました。二部までの魔術戦からは想像もできないというか、まさか空中戦とは…。
マジクの成長ぶりが目覚ましいというか空恐ろしいというか、ここまで至るのにどんな経験を経てきたのか考えると気が重くもなります。開拓史でのヴァンパイア戦はもちろん、キエサルヒマでの戦争とか。
一方で、お師様みたいな強い魔術士になりたいって言ってた子が、師匠に最も信頼される戦士になってるのは言葉にならないですね…。良かったねえと頑張ったんだなあと感慨深いです。
エッジのマジクに対する印象も改められそうですね。短期間で逃げた弟子という認識違いもいずれ訂正されるのかな? 彼女の魔王唯一の弟子という自負がどうなるのか不安ではありますが、ヴァンパイア戦の現実を知った以上、ばねに出来るだろうと思いたいです。

ラッツベインとエッジの戦闘もこれまでにないもので面白かったです。ネットワークの解析が進んだからこそという面もあるんですかね。20年という歳月でいろんな技術が進歩したんだなと思います(進歩させなけりゃ対応できなかったということもあるんでしょうが)。
ラッツベインの「愚図らず魔王術に専念!」で、彼女に対する印象も変わりました。妹の冷静さに助けられていましたが、いざ肝が据わるとさすがあの両親の娘というか。特に、生死きわどい場面で痛烈な一手を撃ちこむ父親を彷彿とさせるようでぐっときました。

新キャラのイシリーンはいい味出してますね。名前だけのモブかと思っていたんですが、まさかこんなにしっかり登場するとは…。
前作の展開からエッジとマヨールの仲を気にしていたので、肩透かしをくらった気になりつつも、イシリーンがいいキャラだったので残念ということはないです。
真面目すぎる部分のあるマヨールにとっては、背中を蹴ってくれるし、それでいて言いたいことも汲んでくれるしで、いい恋人なんだろうなと思います。

今回はクリーオウの出番もけっこうあって嬉しかったです。マヨール達を招き入れて食事を振るったりするところは、いいお母さんだなあと思いました。ラチェットが母親を煩わせないでと怒ったりするところからも、ほんと娘達から好かれてるんだろうなあと。
しかし、オーフェンが謝って今の暮らしになったってことは、さすがのクリーオウも何度かキレそうになったんですかね…。オーフェンの性格も開拓の困難も分かってるだろうし、ある程度は諦めてるし、腹を括っていた部分もあるだろうとは思いますが。もしくは、キレた相手はオーフェンじゃなくて議会あたりなのかな。旦那はしんどい思いをしてるし、娘は巻き込まれかねないし…と考えると。そうするとオーフェンが謝ったというか、キレるクリーオウを謝りながら止めたという想像になってしまいます(笑)。

母親らしさに和んだ後のヴァンパイア戦で「クリーオウはやっぱりクリーオウだった!」と思いました。めちゃくちゃだ…。しかし、さすが過ぎる。ラチェットとのコンビ感がいいですね。
飼い犬(レキなんでしょうか、「犬」としか表記されませんが)もしっかりサポートしてて、クリーオウの側にこの犬がいるのは安心感があります。この犬については、女神の呪いをもらう前の状態に戻ったフェンリルなのかなあと思ってます。
エッジはどうも三姉妹の中で貧乏くじを引く立ち位置のようですね。
クリーオウがオーフェンに相談したいことがなんなのか気になります…。オーフェンは次回も簡単には家に帰れなさそうな雰囲気ですが。

オーフェンパートは相変わらず胃が痛くなるような展開ですね。尋問とか、開拓史の話とか。でもラッツベインやエッジとの会話は和みました。水吐き病はひどい嘘だ(笑)。ラッツベインが天然なのは、オーフェンにも責任があるのでは…。

オーフェンの魔術は圧巻でした。周りの信頼もさることながら、マヨールから見た描写が凄いです。オーフェンはもともと優れた術士でしたが、その魔術についていちいち凄いと思うキャラは少なかったので。ラストの魔王術はもう信じられない規模で、本当に二部までとは相手が違うんだなと改めて感じさせられます。
エッジが目を逸らして震えていたのは印象的でした。魔王の孤独について思うところのあるエッジとしては、やはり魔王さながらの戦いぶりには複雑な思いもあるでしょうし、喪失しているものが分からないというのは不安が大きいと思います。喪失しているものによっては父親を失いかねないですし。
実際、オーフェンは何か喪失してるんでしょうか。魔王の力を手に入れてるから喪失はないのかとも思えますが。魔王スウェーデンボリーといえば「時間を呼吸し、夜空を食らって飢えをしのぐ」という話を思い出しますが、このへんを喪失されてたら大変そうです。まあ、このくだりはおとぎ話のようなものだとは思いますが。

クレイリーはすっかりいいキャラになった気がします。嫌なやつなのに憎めない。しかし、よくある「憎めないキャラ」とはベクトルが違う気がします、上手く言葉にできないんですが。
とりあえず、マジクやエド、シスタも存命のようでほっとしました。

「魔術戦士の師弟」でマジクがラッツベインに「君と同じことをした人を知っているよ」と言っていましたが、これは二部までにあったエピソードでしょうか、いまいいち記憶にないのですが。自分はとりあえずニューサイトを壊滅状態にしたオーフェンのことかな、と思っています。
ニューサイトに住めなくなったのは単純にデグラジウスのせいかと思ってたんですが、今回シマスに放った魔王術の規模を見ると、オーフェンが壊滅させたんじゃないかという気もします。汚染については女神の呪いよろしくデグラジウスのもたらしたものかとは思うんですが。

次回以降のオーフェンはどうなることやら。議会の弾劾が事態をより悪くしなければいいですが。場合によってはしがらみを捨てられるのかも?とも思いますが、なかなかそう上手くいくとも思えず。
そういえば、マヨールは「世界樹の紋章の剣もどき」を持って旅に出てるんですよね? 彼が魔王術を使えないのは驚きでしたが、この剣が使い物になれば、あるいは十分に戦えそうだなあと思うのですが。使い物にするにはまた小細工を仕込まなければいけないようですが、あの剣には何かありそうな気がします。
あとはケシオンもといボリーさんの再登場もあるかどうか気になるところ。
次巻は2012/2/25で思ったより早い刊行で嬉しいです。楽しみ。
《追記 2012/01/03》次巻「解放者の戦場」の発売は2012/03/25になったようです。